眩暈がしそうなほどの香りを放つハゴロモジャスミン。
春の雨は、万物生。
木々は一段とその色をまし、花はさらに芳香が強くなり
生きいきと咲き誇る。
生への活力がます季節はまた負へと傾く時でもある。
木の芽時…という言葉もある。
惑色が、少しでも淡くなるようにと決めた。
女は決め事をすると、断つ。
昔なら秘密の小箱にそっとしまってあった書簡を
小さく切り裂くのだろう。
一瞬で消せることが多くなった昨今は
情感という色も失せている。
春は、極楽という言葉が似合う。
迦陵頻伽とどこからか聞えてくる。
今年一年は心泡立つ事も無く平静に過ごしたい。
・・・
先日二日間、昨年からお世話になっているSさんに
仕事上でご助力を頂いた。
医者は、一人舞台が多いと錯覚しがちな職業である。
特に開業医はその色が強くなると最近痛感する。
周囲からの意見に耳を傾ける柔軟さが要求されるが
いつしか、硬い殻で脳を包んでいく。
Sさんは、柔軟な方である。
一陣の雨のような印象の方だが、本当は暖雨のような
心の持ち主なのだろう。
ありがたい二日間だった。