同僚だったY先生は、50代で亡くなった。
当直は、外来と病棟に分かれていて薄い壁で仕切られている四畳半ほどの部屋に泊まっていた。
「はい、はい、すぐに行きます」とY先生は電話をきると同時に猛ダッシュでいく人だった。
聴診器を肩にかけ、靴も履いて寝ているの?と思わせる速さだったのだ。
熱心で真面目な先生だった。
私の開院時にも駆けつけてくれた、その頃からきっと不調だったのだろう。
遠目でだれか分からないほど痩せていた。記憶の中のY先生はぽっちゃりとした人だったから。
暫く治療に専念されたが、無念だっただろう静かに旅立っていかれた。
人には寿命がある、死なない人はいない。分かりきっていても府におちない事もある。
いつかはお墓参りに行こうと思っているうちに随分時がたってしまった。
お墓をみると直面かし過ぎてどんな気持ちになるか恐ろしい。
本当に良い人だった。綺麗で優しい奥さんと巡り合い、子煩悩なお父さんになった。
時に神様はむごいことをするものだ。
今でもガラケーに「きっと治りますから」というメッセージを消さずにもっている。