昼過ぎの買い物帰りに家人が呟いた。
「蝉がないている」見上げた空はときがたってしまった片栗粉のような色。
なんとなく時間が過ぎていく日曜日。久しぶりに二人きりの休日。
御礼状をかき投函をしたのは夕暮れどき。
蜩がもうないている。
儚い命の蝉たちもひややかな空気のせいで、戸惑っているのだろうか。
カナカナ、カナカナ、一番好きな蝉。
公園の入り口に有料の駐車場ができ、その前に大きな銀杏の木があった。
毎年銀杏ひろいの人をみかけたが数年まえにその木もなくなり
大きな家の跡地には四軒の家がたった。
どの家も洋風で同じ色、形。
銀杏の家の痕跡はまったくない。
このあたりをずっと守っていた木だった。
縁側があり、エゴノキ、梔子、山法師が植わっている庭に住みたい。
欄間、障子、ふすま、畳、風を肌に感じる日本家屋をみなくなった。
年を重ねると原点に戻っていくのだろう。
だが、それも昭和生まれの私たち世代で終わりだろう。
にほんブログ村
にほんブログ村