ある方のサイトに黒電話の写真があった。
じー、じーっとダイヤルを回す。
心臓が張り裂けそうになっていく・・・
受話器を置く、そしてもう一度ダイヤルを回す。
好きな人に電話をかけるのも一大決心だった頃。
ダイヤルからボタンへ、今は短縮で即繋がる。
手紙からメールへ、便利さは味気なさも含まれている。
明るい青色の文字、丁寧に書かれた文字を思い出す。
初めて貰ったラブレターは、心を寄せている人からではなくて
それでも、何枚もの便箋を当惑しながら読み返していた。
迷いや、もどかしさ。
父がじっと耳をこらし会話を聞いていて耳まで火照った記憶に
苦笑する。
でも、なんていう事のない会話だった。
「どうしているかと思ってね」
Yさんの穏やかな声が蘇る。
片付けをしていて出てきた大学の同窓会名簿の
や行を捜して、そっと溜息をついた午後。
青いボタンダウンのシャツ、チノパン。
VANというブランドをさりげなく身につけ
ケンとメリーのスカイラインに乗っていた人だった。
好きになる人は、いつも到底振向いてもくれなさそうな人だった。