最期行きという列車にどの人も乗っている。
淡々進む列車。
偶然席が隣通しになり話の弾む人もあれば
ただ会釈して席をたっていく人もいる。
車窓からの景色を愛で、美味しいお弁当に舌鼓をうち
時にほろ酔い気分にもなるだろう。
乗合わした人と親密になる事もあるだろう。
離れがたく中々降りる事を躊躇う人もいるだろう。
でも・・・
いつかは、1人になる人生という名の列車。
・・・
心が傾く男は、危険という香りがした。
大胆かつ繊細、隣の決まった女のにおいをさせない人。
羊のような目をして女をみつめ別れ際には狼の光を放つその目。
「恋に酔っているだけだよ、貴女は」そう言ってあの人は泣いた。
ルールをわきまえている人だった。
今日の皆既日食、誰とみたのでしょうか・・・
列車の指定席はあの人のために今もとってある。