携帯が鳴る。
毎日母がくれる電話。
「体の調子は大丈夫?今年は少し旅行したり自分の時間を
作った方がいいわよ」
母の言葉は嬉しくて、大切にしたいといつも思うそして
健やかであって欲しいと。
子供時代の恐怖は少し消えつつある。
「母が急にこの世からいなくなってしまうのでは・・・」
学校から帰宅すると母が荷物をまとめて家をでていたりする事が何度となく
あったせいかもしれないしまた、心労のため食事が食べられず痩せていく
姿をみていたせいかもしれない。
家庭は子供が安心感を得る最初の場所。
私には残念ながら両親の諍い、泣声、不安が渦巻く場所。
もっと愛して・・・私だけを・・・なんていう厄介な女はこんな環境に
過ごしていた人だろう。
動物が人を見る眼は、愛に満ちているように見える・・・
本当に信頼している人にだけ見せるあの眼。
幼い時から犬や、小鳥を愛したのはそういう事なのだろう。
犬のような眼差しの男に弱いのは・・・きっとそんな理由かもしれない。
「貴女は、犬のフリをした猫科の女だね」と以前言われた。
そう言ったあの人も濡れた犬の眼差しの男だった。